日本人にとってミステリー的な存在の音節

2020年1月

音節」とは母音ごとに発音のまとまりを区切ったもの
英語ネイティブには当然の知識として身についているが、これが実は日本語を母国語とする人には謎めいたものである。 なぜならば、日本語には「ん」以外で子音だけの発音がなく常に母音がつきまとう言語だからだ。日本語には「母音ごとに区切る」という発想がないのだ。

英語と日本語の文字表記の違いと発音の違い

アルファベットの表示体系を「音素文字」という。
各アルファベットに名前はついているが、発音自体は複数ありアルファベットの並び順によって使い分ける。
母音役割のアルファベット (a/e/i/o/u) と子音役割のアルファベットがあり、それらを組み合わせて1つの単語になり、そして初めてその単語独自の発音を持つ。
だから、1つの単語が5文字のアルファベットからなるがその中で母音は1つだけ、というような単語はザラにある。英語ではむしろそんな単語ばかりである。
例えば「drink」は5文字のアルファベットだが母音は1つ「i」だけである。
つまり drink は1音節の発音となる。

それに対して、日本語の50音字は世界でも稀にみる「音節文字」である。
音節文字というその名のとおり、1文字がすでに母音を含む1音節になっているのである。
「ドリンク」は文字にすると4文字だが、日本語は「ん」以外の各文字に母音を含むから「do/rin/ku」と3音節になる。
こんなにも違う発音になるのだからカタカナ英語で通じないというのは当然のことである。

英語は子音がリード日本語は母音がリード

英語は子音の羅列の中に母音がポツン、ポツンとあるような言語なので、1単語の音節の数や区切り箇所を知ることは英語の発音おいて重要である。
そのため、英語圏の学校ではフォニックスと同じように、音節も当然教示するべき知識として教えられる。
ところが、日本語の50音字は「1文字=1音節」だから改めて「音節」を認識する必要もない。
そのことを知らなくても日本語を話す上では発音や読み書きにおいて何の問題もない。
よって、日本語を母国語とする人(以下「日本人」と称す)にとって「音節とは何ぞや?」となってしまう。
そんな無意識に身についている「1文字=1音節」もジャマをして、日本人は子音の羅列が聞き取りづらいし、それらをしっかり発音しようとしても、どこかに母音がついてきてしまう。

音節はリズムであり音の長さではない

日本人にとって音節とはミステリアスな世界なのだから、すぐに理解できないのも無理はない。
音の長さと勘違いしそうだが、音節とは音の区切りでリズム的なものであり音の長さではない。
例えば strength はアルファベットが8つもあるのに母音は1つだけだから音節は1つだ。
strength が1音節だからといって、日本語の「あ」と同じ発音の長さで言わなければならない、ということでない。
トン、トン、トンというリズムをトンと1つ打つときに、1音節を1つのグループとして発音する、というのが音節だ。このときの音の長さはどうでも良い。
「リズム」と「音の長さ」が違うことは音楽に明るい人であれば理解は早いだろう。

比較的有名なキラキラ星の歌で例をあげてみよう。1音節ごとに斜線を引いている。
英語では文字数が多くても音節ごとに1つのリズムになっていることがわかるだろう。
twinkle、little、wonder は2音節で、やはりそれらには日本語の2文字が当てられている。

Twin/kle / twin/kle / lit/tle / star / How / I / won/der / what / you / are
 キ/ラ  /  キ/ラ / ひ/か /  る  /  お / そ /  ら/の / ほ / し  / よ

アメリカ英語とイギリス英語で違う音節もある
 status はアメリカではスタータスと発音する

アメリカ英語とイギリス英語では音節箇所が違う単語もある。それにより発音も違ってくる。
それはフォニクス(綴りと発音の関係性)による発音の仕方が変わってくるからだ。
便宜上、発音をカタカナでも記すが、例えば status の発音は、イギリス英語では日本人が一般的に知っている発音「ステイタス」なのだが、アメリカ英語では「スタータス」と発音する。
これを知った当初はビックリ仰天して「パパウシだけがそんな発音するんじゃないか?」とさえ思ったが、どうやらアメリカでは「スタータス」の発音が広く一般的のようだ。
パパウシも「今までステイタスなんて発音聞いた事ない」というほどである。

American English --- stat/us [stæt/əs] [stăt/us](スタット/アス--->スタータス)
British English --- sta/tus [stei/təs] [sā/tus] (ステイ/タス)

フォニックスでは音節末が子音で終るときの直前の a は short a の発音(stat/us)というものと、a が音節末で終るときは long a の発音(sta/tus)という違いによるものだ。

アメリカでは広く一般的な stat/us の発音は、英和辞書にはまず載っていない。
英英辞書でも載っていることは稀である。私が知る限り Oxford dictionary にはアメリカ・イギリス両方の発音が載っていたが音節までは載っていなかった。
私は他に Longman, Cambridge, Merriam Webster の英英辞書を利用するが、これらに載っている発音と音節はどれもイギリス英語の発音と音節だけであった。
Merriam Webster はアメリカの辞書なのに。
やはり生きた英語を知るには生身の人間と会話をすることが一番重要だと改めて思う。

音節の数が変わるだけで発音も違って聞こえる

e で終る単語だと最後の音節に母音がないこともあるが、通常は各音節に母音を1つ含む。
camera は cam/er/a [kæmərə] と3音節で各音節に母音がある。
最初の母音は short a の発音だがあとは曖昧母音の記号になっている。
この曖昧母音の部分は英語ネイティブは e か aで発音しているが非常に弱い。
だから、そこが日本人には聞こえず、英語ネイティブが「ca/mra」と言っているようにしか聞こえないから口真似して「ca/mra」と言う。 それだと2音節にしかならない。
英語ネイティブには違う単語に聞こえることもあるようだ。
それでも会話の途中の単語であれば内容やジェスチャーなどから通じるだろうが、単語だけ発する場合にはやはり音節も意識する必要がある。

英語の音節を知るには英語の子音発音を学ぶことが不可欠

音節を意識して的確に発音できるようになるには、英語は子音がリードする言語であることを理解し子音だけの発音を知る必要がある。
これを知らなければいくら音節だけを学んでも理解できない。
なぜならば日本人は無意識に母音もつけて発音する舌になっているからだ。
日本人にとって音節はミステリー的な存在だが子音を意識すれば理解できるようになる。

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