法助動詞 willとwould

2018年11月

willとwould の使い分けについて、端的に行ってしまえば以下である。

   will ・・・ 今後、確実に起こるだろうと話し手が思っていること
   would ・・・ (1) 話し手の推測や仮説
         (2) willの過去形

will は今後のこと、確実な意志、話し手の確信的な思い

未来形の代表格である will は日常的に一番使う法助動詞ではないだろうか。
日本語を母国語とする人には「未来形?えー未来?」と英語を勉強したてのうちは混乱するが、英語と日本語は別の言語であることを受け入れられれば、たいして理解が難しいものでもない。
和訳で理解しようとするから余計に混乱するのだから、今まで散々口酸っぱく述べてきたように、英語を和訳で理解しようとしてはいけない。

未来形は日本語にはないというわけではなく、日本語にすると現在形と同じ和訳になってしまうから、日本人には「言語の未来形」という概念が薄いというだけのことである。

 現在形: I eat bananas sometimes. 時々バナナを食べます
 未来形: I will eat a banana tomorrow. 明日バナナを食べます

will が意味するものは「今後のこと」「確実な意志」「話し手の確信的な思い」である。
助動詞 will が付随する限り「今後のこと」を話していることは明確であり、さらに、主語が自分でも他の人でも動物でも物でも、それらはすべて「話し手の確実な意志や確信的な思い」に基づくものである。
will の用法に「習慣」もあるが、これだって根底には「いつもしているから、また確実にするだろう」という「話し手の確信的な思い」が含まれている。
否定は won't = will not で、「(主語が)絶対にしないだろう」と話し手が確信的に思っていることになる。

I will call her later.
あとで彼女に電話するよ。(という意志が確実にある)

I'll (= I will) be right back.
すぐ戻るよ。(という意志が確実にある)

He will go there.
彼はそこへ行くよ。(と話し手は確信的に思っている)

It will rain this afternoon.
今日の午後、雨が降るよ。(と話し手は確信的に思っている)

"I don't think Lucy likes the new dog food. She doesn't eat it.
「ルーシーは新しいドッグフード好きじゃないみたい。食べないもん」
"Don’t worry. She will eat it."
「心配しないで。(そのうち)食べるさ」(と話し手は確信的に思っている

I won't drink sake anymore. I will drink only beer!
酒はもう絶対飲まない。ビールだけを飲む!

She won't come tomorrow, no matter what I say.
私がどんなことを言っても彼女は明日来ないよ。(と話し手は確信的に思っている

be doing / will be doing / will do / be going to do
 は気持ちの確実性の違い

未来を表すフレーズとしてbe doing や be going to do などがあるが、話し手の確実的な気持ちの度合いが違うだけで今後のことを話していることには変わりない。
以前のエッセイ「will と be going to について」にも記載している。

be doing > will be doing > will do > be going to do

be doing (現在進行形)

今それをしているまたはそうなっていると思えるくらい確実に起こるであろう

I am visiting my friend in the U.S next month. I have booked my flight.
来月アメリカの友人を訪ねるんだ。もう飛行機の予約もしたよ。
John is coming to Japan next month. He told me that.
ジョンは来月日本に来るよ。彼がそう言ったもん。
(本人が言ったので100%に近く確実だと話し手は思っている)

will be doing (未来進行形)

それをしているまたはそうなっているだろうと確実に思える。成り行き上そうなるであろう

I will be visiting the toy factory in the U.S. next month because of my work.
仕事のために来月アメリカのおもちゃ工場を視察に行くことになっている。
John will be coming to Japan next month because of his work.
仕事のためにジョンは来月日本へ来るよ。
(ジョンが仕事で来月に日本に来るというスケジュールを話し手は知っている)

will do (単純未来)

今後それをするという意志がある、またはそうなるであろうと確信的に思う

I will visit British Museum in the future.
私はいつか絶対に大英博物館に行く。(という意志がある)
John will come to Japan next month. He visits his Japanese grandma for Christmas every year.
ジョンは来月日本に来るだろう。彼は毎年クリスマスに日本のおばあちゃん家を訪ねるから。
(この話をしているのは11月であり、ジョンが毎年クリスマスに日本に来るので、また来るだろうと話し手は確信的に思っている。)

be going to do (予定未来<--- 私の勝手な造語)

それをするまたはそうなる予定である

I am going to visit my friend in the U.S. next month if I can book my flight.
もしフライトが予約できれば来月にアメリカの友人を訪ねるつもりだ。
John is going to come to Japan next month, but he hasn’t booked his flight yet.
ジョンは来月日本に来るつもりだけど、まだ彼はフライトの予約をしていない。
(ジョンは日本に来る予定だが、状況からあくまでも予定だと話し手は思っている)

強い意志の表れだからこそ "Will you 〜?" はちょっとした命令形になる

will は強い意志なだけに、"Will you〜?"と2人称の疑問文にすると軽い命令形の表現になる。

Will you please be quiet?
静かにしてくれるかな?(静かにしてください)

pleaseが入っているから少しは柔らかくなるが、直訳すると「きみは静かになる意志が確実にあるよね?」なのだから、これは依頼というより半ば強制に近い。だから軽い命令形になるのだ。

Will you marry me?
私と結婚してください。

これはプロポーズの言葉としてかなり一般的だが、ではなぜこんな命令形に近い Will you 〜? が使われ、丁寧な依頼表現で使われる Would you 〜? や Could you 〜? があまり使われないのだろうか。それは、
まず「今後のことを尋ねている」という点がひとつ
そして「相手の意志を尋ねている」という点がひとつ
そして何よりも
「Would you marry me? もしよければ私と結婚してくださいますか?」でもなければ
「Could you marry me? 私と結婚して頂ける可能性はあるでしょうか?」でもなく
「Will you marry me? 私と絶対に結婚してください!」という強い意志の表れだからである。

would は話し手の想像や推定

would は話し手の推測や仮説を表現する。
would do だと現在〜今後を、would have done は過去(後述)を表わす。

I would say "Goodbye" to him in such a situation.
そんな状況では、私なら彼に「さよなら」って言うだろうね。(と仮説を述べている)

I wouldn't go to Alaska in the winter.
私なら冬にアラスカへ行こうとは思わないよ。(と仮説を述べている)

これらが will や will not だと、「今後のどこかで確実にそうしよう/絶対にそうしない」
と述べることになるが、would だと仮説を伝えているに過ぎない。
本来ならば「if I were you/him/her/someone (もし私があなた/彼/彼女/誰かなら)」が付くが、それが省略されているというケースが多い。

If I won the billion yen lottery, I would buy at least three big houses.
もし宝くじが10億円当たったら、少なくとも3軒の大きな家を買うよ。(と仮説を述べている)

Her mother would be around age 50.
彼女のお母さんは50歳ぐらいだろう。(と話し手は推測している)

She wouldn't work if she didn't need money.
お金が必要でないなら彼女は働かないだろう。(と話し手は推測している)

He wouldn't help me if he wasn't a nice guy.
彼が優しい男性じゃないなら私を手伝わないだろう。(と話し手は推測している)

"We are having a party tomorrow. Do you want to join us?"
「明日パーティーするけど、参加しない?」
"That would be great."
「いいねえ。」(いいことになるだろう)

この場合に will を使うのは不自然である。なぜならば、パーティーが確実に great になるかどうかはこの時点では推測でしかないからだ。
このケースで will を使うのは、確実に great になるようなこと(理由など)を述べる場合である。
例) That will be great because I can get away from my parents.
 「いいねえ。親から離れられるからね。」

"I am going to the convenient store. Do you want me to get your lunch?"
「コンビニに行くけどあなたのランチを買ってこようか?」
"That would be nice."
「いいねえ」 (もしそうしてくれるなら、ありがたい)

この場合に will を使っても問題はないが、やはり would を使う方が自然な言い方である。
それは「That would be nice if you could(もしそうしてくれるなら、いいね)」と本来ならば仮定法過去(仮説に基づく可能性)のif節が付随しているからだ。
それにより、ちょっぴり控えめにお願いしている形になる。

"Susan will invite us to her new house this coming Saturday."
「スーザンは今度の土曜日に彼女の新しい家に私たちを招待するつもりよ。」
"That would be wonderful, but I have to work that day."
素敵だね。でもその日は仕事に行かなきゃならないよ」

この場合は明らかに will は使えない。
断っているのだから wonderful になるのは仮説でしかないからだ。
これも本来ならば「That would be wonderful if I could (もし私が行けるなら素晴らしいことだ)」と仮定法過去(仮説に基づく可能性)のif節が付随している。
それにより、断る前にワンクッション置いている形になる。

Would you 〜? は丁寧なお願いやお誘い

"Would you 〜?"と2人称の疑問文になると丁寧な依頼を表現する。
would は話し手の推測や仮説なので、直訳すると「あなたはそうするでしょうかね〜?」
であり、やんわりと依頼しているのだ。

Would you please pass the soy sauce to me?
醤油を取ってくれますか。(依頼)

Would you care for a cup of coffee?
コーヒーを1杯いかがですか。(お勧め)

Would you like a cup of coffee?
コーヒーを1杯いかがですか。(お勧め)

いずれも直訳は「あなたはコーヒーを欲しいでしょうかね〜?」であり、
それとなーくお勧めしているのだ。

Would you like to see a movie this weekend?
今週末、映画を見に行きませんか。(お誘い)

直訳すると「今週末あなたは映画を見るのが好きでしょうかね〜?」で、
それとなーくお誘いしているのだ。

※直訳部分は解説の便宜上そうしているだけで、実際はとても丁寧な表現である。

would が will の過去形になるとき

過去に起きた主語の固執や拒絶

過去に起こった固執や拒否など、主語の強い意志によるものだと話し手が思っていること。
ただ1つ注意するのは「誰かの意に反して」的なニュアンスを含有する。

He would enter the river to rescue a kitten though I told him not to.
私は止めたのだが、彼は子猫を助けるために川へ入っていった

would なしの単なる過去形(entered the river)だと、川へ入った事実だけを表現するが、
would enter the river だと「止めた人の意に反して(主語には)絶対に川へ入るという固い意志もあった」と話し手が思っていることを意味する。

He wouldn't help me, no matter how much I begged.
私がどんなに頼んでも彼は私を手伝ってくれなかった。

didn't だと手伝わなかった事実だけを表現するが、wouldn't だと「頼んだ人の意に反して、彼には手伝う意志すらもなかった」と話し手が思っていることを意味する。

The key wouldn't unlock the door.
ドアのカギはどうしても開かなかった

didn't だとカギが開かなかった事実だけを表現するが、wouldn't だと「カギを開けようとした人の意に反して、カギはどうしても言う事を聞かなかった」といった表現になる。
主語が物の場合は擬人化しているので、やはり話し手がそう思っていることを意味する。

Here are a couple of photos of the day. I tried to send more earlier, but the file wwouldn’t send.
その日の写真を2枚添付しています。もっと早くに送ろうとしたのですがファイルがどうしても送れなかった

時制を一致させるため

主節と従属節の時制を合わせるために will が would になるだけのことで、意味は will と同じである。

They said (that) they would ship my order within the next few days.
お店の人は私の注文品を数日内に発送すると言った。

She told me (that) she wouldn't be coming to the party this weekend.
彼女は今週末のパーティには来ないと私に言った。

would は過去の反復も表現する

would は昔に繰り返し行っていたことも表現する。
will の習慣を表す「いつもそうしているから、またするだろう」の過去形バージョンと言える。

When my family all got together, my sister would play the piano.
家族みんなが集まると、姉はよくピアノを弾いたものだ

My grandpa would smoke a pipe after dinner.
おじいちゃんはディナーの後、よくパイプをくゆらしていたものだ

used to との違い

「昔よくしていたものだ」という表現に「used to」があるが
would は「昔繰り返し行っていた事実を述べているだけ」であるのに対し
used to は「昔はよくそうしていたが、今はしていない」という意味を含有している。
失恋ソングには used to がよく使われているが、これがまた人の涙を誘うのだ。

My grandpa used to smoke, but he quit when he had a major disease.
おじいちゃんは昔タバコを吸っていたが、大病したときにやめた。

しかしながら、必ずしも「今はしていない」という時にばかり使うわけでもない。
今はどうかより「かつてそうだった」という点だけに焦点を当てるときにも使うことがある。
以下はある日の我が家の会話だが、このプリンターはもともとパパウシのもので一時期私が譲り受けた。 しかし私のPCと相性が合わないようで、またパパウシに戻したものである。

パパウシ: The printer ran out of ink.
     プリンターのインクがきれた。
ママウシ: I have an ink cartridge. Do you know how to change it?
     私インクカートリッジ持ってるよ。変え方わかる?
パパウシ:(オイオイという表情で) I used to use the printer.
     以前は僕がこのプリンターを使っていただろ。

I would have done, but 〜 〜するつもりだったけどできなかったんだ

過去に「するつもり、もしくはしたかった」が、やむを得ず出来なかったことを表現する。
この形の教示は日本ではあまり見かけないが実は一般的な使い方である。

I would have called you, but I didn't have time.
きみに電話するつもりだったが、時間がなかったんだ。

He would have left for home early, but he had to work late.
彼は早く帰宅するつもりだったが、残業しなければならなかった。

She would have baked pecan cookies, but there were no pecans at any stores around her.
彼女はペカンクッキーを焼くつもりだったが、彼女の近くのお店はどこもペカンを置いていなかった。

I wouldn't have drunk beer today, but I was very thirsty.
今日はビールを飲むつもりはなかったのだが、すごく喉が渇いていたんだ。
* パパウシ家ではよく聞くセリフ・・・

I would have done if I had done もし〜したら・・・したのに

「もしそうだったら、こうしていただろう/こうしていたのに」という、過去のことに対する
話し手の推測や仮説を表現する。 だから、実際には起こっていないことである。

If I had known the package was coming, I would have stayed home.
小包が来ることを知っていたら、私は家にいたのに

I would have asked you to get eggs if I had known you stopped by the store.
あなたがお店に寄ってくると知っていたら、私は卵を買ってくるよう頼んだのに

I wouldn't have come here if it had not been important.
それが大事じゃなかったら、私はここへ来ていないよ

If he had kept talking about ghosts, she would have left the room.
彼が幽霊の話をし続けていたなら、彼女は部屋から出て行っただろう

My husband wouldn't have married me if I hadn't been good at cooking.
もし私が料理上手じゃなかったら、夫は私と結婚してなかっただろう

当然だが英語に未来形という時制は存在する

最近はインターネットで誰も彼もが情報を流すことができるので、英語の教示でもそれはそれは相当な情報が氾濫している。
勿論、中には感心するくらい素晴らしい教示もあるが、しかしながら残念な教示があるのも事実である。 動詞活用を引き出して未来形はないなどと教示しているとはいかがなるものかと思う。

当然だが英語には未来形という時制はちゃんと存在する。
will は今後のことを表現する。今後のこととはつまり未来のことなのだ。

will の基本の定義は「意志」である。「意志」とは「強い決心のこと」である。
それが未来と何の関係があるか?と思うかもしれない。
だが「強い決心」はいつのことについて行うか?
過去のことでもなく現在のことでもなく、それは「今後のことについて」であろう。
だから will は未来形という時制をリードしているのだと思う。

言葉は生き物である。
言霊と言う言葉があるように、英語であろうと日本語であろうと言葉には魂が宿る。
「will」は「意志」を表わすが故に魂と最も密接に関わる単語ではなかろうか。
ちなみに遺言状も「a will」という。
大袈裟だが、コミュニケーションとは魂と魂の対話でもある。
英語でコミュニケーションを取る機会が増えれば、will について本当に理解するのは
さほど難しいことでもない。
will は人々の意志を受け継ぎ未来へとつなぐ荘厳な単語なのである。

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