will と be going to について

2017年9月

will と be going to の違いは意思の強さの違い。決めた時期ではない!

will と be going to の違いに関する質問をインターネットでよく見かけるが、”そんなに使い方が難しいか?”と首をかしげたくなる。両者の違いは至ってシンプルだからだ。

will
今以降のどこかで自発的にしようと思っていることや自然に/自動的にそうなるであろう出来事。
端的に言えば、確実性の高い予定。
敢えて和訳するなら「(必ず)〜するよ」「〜が起こる(ことになる)」

be going to
単なる予定。
敢えて和訳するなら「〜するつもり」「〜が起こる予定」

will と be going to の違いなんて単純にこれだけ。
そもそも、違い違いって大騒ぎするほどのことでもない。
will は多義だが be going to との比較においては、基本的にお互い同義なのだから。

ところがあるとき、驚愕の解説に目が止まった。
「will は今決めたことで、be going to は以前から決めていたこと」
えー?!一体こんなこと誰が決めたんだ?!ビックリである。
こんな定義もどきで指導されたら、混乱もするわなぁと思ってしまった。

しかも、この定義もどき、日本国内だけでなく海外の英語フォーラムでも記されてあり、広範囲に蔓延しているようではないか。どうも腑に落ちない。
どう考えても will と be going to は、そんな定義もどきでは成り立たないことも多い。
しかし、ここまで当たり前のようにこの定義もどきが蔓延しているとなると、そう信じ込ませる何かがあるのだろう。

色々調べてみると、will と be going to の違いをそう指導するように教示している英語教師向けの本を見つけた。

True to Life Pre-Intermediate Teacher’s Book: English for Adult learners
1. We use "going to (do)" to talk about plans and intentions, when we have decided in the past about an action in the future.
  Example: I'm going to work hard next year.
  (I thought about it in the past and made a decision before now.)
2. We use "will" when we decide something at the moment of speaking, not before.
  Example: A: Would you like a drink?   B: Yes, please, I'll have a coffee.

これが大元かはわからないが、世界的にも有名な大学から出版された本でキャリアある英語教師トレーナーもそう指導しているとなれば、そりゃあ、それを信じないわけにはいかないだろう。
英語教師用の本なので、他にも生徒への教示の仕方や例文やそれを使う場面が記されている。
確かにそれらのケースではその定義もどきが成り立つが、実際にはそれを定義としてコミュニケーションを取るのは不自然である。

なぜなら、それは英語ネイティブスピーカーが実際に普段使うときの概念ではないからだ。
この本を書いた人も英語ネイティブスピーカーだろうが「will は今決めたことで be going to は以前から決めていたこと」という教示は、日常の狭義だけに焦点を当て、それを『公式化』するために無理やり捻出した指導法という感じがする。

確かに「be going to」を使うときは、以前から決めていることを言いがちだ。「単なる予定」であり、敢えて和訳すると「するつもり」なのだから、たった今決めたことを「するつもり」とはあまり言わない。

しかし、英和・英英どの辞書を見回しても「will」に「今決めた」という定義はないし、実際に使うときにも「今決めた」というニュアンスはない。
当然、英語ネイティブスピーカーが will や be going to を使うときには、今決めたかどうかなんていうことは頭の中にないし、ハッキリ言ってそんなことはどうでもいい。
例え will を使うときに”今決めた”場合が多いとしても、そこが will の重要ポイントではない。
重要なのは「そうしようという意思がどれだけあるか」という点であり、それが will と be going to の違い
なのだ。

私は、会社で輸入取引の文書やメールに携わり、会社の上層部へ届く米軍基地の招待状や海外からのメールなどの翻訳も手掛けるが、それらにはビジネスの内容でも個人的な内容でも will が頻繁に使われている。
それは、何もそれらの文書やメールが作成されている最中に”たった今”決められたからではない。「確実に行おうとしていること」が表現されているのだ。
特に約束事などでは will が必ず使われている。「何時にどこそこへ到着します」「この商品は何日に発送します」「式典をいついつ行います」等々・・・。
これらは、当然のことながら、行き当たりばったりに決められたのではなく、きちんとスケジュール管理をされた上で相手に連絡されている。「以前から決められていたこと」であるはずなのに、be going to が使われているのはあまり見たことがない。当然である。それは「ほぼ確定の決定事項」を連絡しているからだ。
よく使う「I will let you know as/if/when/(〜次第/〜なら/〜したらご連絡します)」なども、たった今連絡することを決めたから will を使っているのではない。「確実に連絡するという意思があります」と述べているのだ。

他にもよく違いを取り上げられるのが「be doing (現在進行形だが今後の予定も表す)」や「will be doing」だが、これらも含めて違いは、話し手の持つ「今後しようと思っている行動に対する意思の強さ具合」や「今後に起こる物事に対する確実さ具合」の違いだけだ。

be doing > will be doing > will do > be going to do
be doing … 今その行動や物事が起こっている感覚であるくらい確実に近い
Mama: Tomorrow is recyclables day. Please take out the cans.
Papa: Okay. Should I take out the plastic bottles too?
Mama: No, you don't have to. I'm taking them out.
will be doing … 成り行き上/自然に/自動的にその行動や物事が起こることになるだろう
Susan: You look very nice. Do you have something special going on today?
Peggy: I have a date tonight. We will be going to the movies.
Zoey: Your trip to Tokyo is next weekend, right?
Augi: Yes, it is. I will be hanging around Akihabara by this time next weekend.
will do … 必ずその行動をするという意思がある。必ずその物事が起こるだろう。
Mother: Can you help me with cooking this evening?
Daughter: Sorry, I can't. I'll be late to come home because of my work.
Kimmy: I am wondering how Jimmy will get here from the station.
John: Don't worry. I will pick him up at the station.
be going to do … その行動や物事が起こる予定
President Hank: Do you have time tomorrow to talk about this issue?
Employee Dave: Well, I am going to take a day off tomorrow, but I can reschedule.

でも will と be going to は基本的に同じ意味。だから交換可能な場合が多い

アメリカ人である主人は、前述の定義もどきをどう思うのだろう。訊いてみた。

ママウシ「あるイギリスの大学では、will は今決めたことで be going to は前から決めていたこと、なんて教えているようだけど、どう思う?」
パパウシ「いかにも、アカデミックな教示法だな。そういわれてみれば、そんな傾向もあるかもしれないけど、普段はそんな概念で使わないよな。will は今後のことで確実な意思、be going to は予定。でも、どっちも同じ意味でお互いに交換可能。will の方が確実に近いけど、時間要素が同じであれば違いなんて何もない。I will eat this banana tomorrow. も I am going to eat this banana tomorrow. も、『明日このバナナを食べよう』と思っていることには変わりないんだから。」
ママウシ「じゃあ、will は今決めたことで、be going to は前から決めていたことっていうのは定義としては成り立たないよね」
パパウシ「そりゃそうだよ。will も be going to も今後のことを表現するのだから、今とか以前とかは関係ない。」

今後を表す表現は、他にも intend やplan など別の単語で多数多様な表現ができる。
しかしだ、これら同義同志の取るに足らないわずかな違いをニュアンスと称して重箱の隅をつつくように散々御託を並べてみても、時間要素が同じであればそれらは全く同じ意味でしかない。
next week という時間要素がつけば、next week にその行動をする、または、その物事が起こるという意味に何も変わりはないのだ。

つまり、will と be going to をあべこべに使ったとしても何ら間違いではないし、ほとんどの場合において何も違和感はない。
若干ニュアンスが違うことがあったとしても、will と be going to のニュアンスの違いなんてたかが知れている。誰も気にも留めないレベルだ。
どこかで「will と be going to を使い分けなければ教養を疑われる」なんて第2弾ビックリ文言を見た事もあるが、「I'm gonna」などとスラングを場違いな状況で言ったりしない限り、決して教養を疑われるようなことじゃない。

「will は今決めたことで、be going to は以前から決めていたこと」なんていう狭義がすべてだと思っていると簡単に以下のような誤った解釈を引き起こす。
こんなひどい誤解釈をするくらいなら「will と be going to は同義」とだけ覚えている方がよっぽどマシだ。

× "高校卒業時に I will enter the university. と言ったならば、たった今、大学に入ることを決めた計画性のない人で、I am going to enter the university. と言ったならば、以前から大学に入ることを決めていた計画的な人"
× 強盗に入った人殺しが言うなら、今決めたことなので "You will die."
医者が言うなら、前もってわかっていることなので "You are going to die."

高校卒業時に I will enter the university. と言っても I am going to enter the university. と言っても「今後は大学に進学するのだ」と述べているだけ。
計画的とか決めた時期なんていうのは、この文章だけからはわからない。
敢えて言うならば、前者の方が大学に進学する意思が固い。

You will die. も You are going to die. も「君は死ぬのだ」という恐ろしい意味でしかない。
誰がどっちを使うというわけでもない。
だいたい「君は死ぬのだ」なんて言う医者もいないだろう。
余談だが、主人が一時期PCゲーム作りに夢中になっていたことがある。
そのときに、日本語訛りの音声がゲームに欲しいということで、私は「You're gonna die! (= You are going to die)」と何回も言わされたことがあったが、そのキャラクターはピストルを持った女性のアジアン・キラーだった。

I will miss you. と I am going to miss you. なんて全く同じだ。
今突然思ったか前から思っていたかなんていうのは、この文章だけからはわからない。
「今後はあなたがいなくなって寂しくなる」という気持ちを述べているにすぎない。
敢えて和訳するならば「これから、あなたがいなくなって寂しくなるよ」「これから、あなたがいなくなって寂しくなるだろうな」くらいの違いだろう。
こんなのただの和訳の違いであってニュアンスという類の話でもない。
どっちも同じ和訳にだってできる。

The festival will be held this weekend. も The festival is going to be held this weekend. も全く同じ意味だ。
敢えて和訳するならば、「今週末にフェスティバルが開催されます。」「今週末にフェスティバルが開催される予定です。」
普通は will が使われていることが多い。「単なる予定」をわざわざ公表することもないからだろう。しかし、この内容で be going to が使われていたとしても、なんの違和感もない。
「そっか、今週末にフェスティバルがあるんだ」としか思わない。

「It will(It'll) rain. と It is(It's) going to rain. の違い」なんて例も見た事あるが、これも「今後のどこかで雨が降るだろう」と述べている全く同じ意味である。
雨が降りそうな空を見上げて言うときでも、高い降水確率を知っていて言うときでも、どちらを使っても何の問題もない。
主人によると、厳密に言えば、このどちらも100%の降水確率を思わせることもあるので、
It will most likely rain. / It will probably rain. / It's going to rain in all likelihood.
などが適切だろうと言う。
いずれにしても、will と be going to の比較という点では、同義でしかないということだ。

九州には「ねまる」という方言がある。
方言辞典によると「腐る」と同義らしいが、実際には私が住む地域では、完璧に腐る少し手前くらいの状態を「ねまる」と言い、完璧に腐っているものを「腐る」という。
だからといって、腐っている肉を「この肉はねまっている」と言ったところで、誰も「この肉はねまってるんじゃない。腐ってるよ!」と反論したりしない。
もし誰かがそんな反論を言おうものなら「どっちも一緒じゃないか!」とツッコミを入れられるのがおちだ。
ねまっていようが腐っていようが、その肉は食べられずに捨てるしかないことには変わりないのだから。
will と be going to の違いもこの程度のことだ。

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