日本人の英語発音

2017年12月

英語の発音は日本語を母国語としている人(以下「日本人」と称す)にとっては結構難しい。
日本語にはない発音はもちろんのこと、国際音声記号上は日本語と同じとされる英語発音でさえも息の出し方や舌の位置の違いなどにより少々異なるものがある。

まず、生まれてからずっと日本語しか話していないのであれば、どんなに努力しても日本語の訛りは完全には消えない。かなり英語ネイティブに近いレベルにまでなることは可能だが、それでも英語圏の人が聞いたら訛りがわかる。
日本語も英語も全く訛りなく話す人は幼いころからからのバイリンガルだ。

英語の習得に発音は大事かと訊かれることがあるが、私の答えはこうだ。
・単語しか話せない、または単語が重要な状況(レストランの注文など)では発音は大事。
・会話が成り立つ程度に英語を話せるのであれば発音はさほど重要ではない。

英語は子音が主役の発音と言えるが、日本語は母音が主役の発音と言える。
英語はアルファベット1文字が子音か母音のどちらかで、それらの組み合わせによって発音する。
その組み合わせは子音の連続が圧倒的に多く、英語は子音が言葉をリードしていると言っても過言ではないだろう。
これに対して日本語は「ん」以外の50音すべてが、1文字で「子音+母音」もしくは「母音だけ」の発音をする。日本語は母音なしでは発音できない。

そういった性質上、日本語は母音を発しやすい発音をするので、母音が強く子音が弱い。
英語を話すときに、これが決定的に日本語訛りを悟られる要因となる。
「母音」とは舌や歯や唇で声を遮ったりしない発音であり、「子音」とは舌の位置や形を変えたり唇を閉じたりして声や息の通り道に影響を与えて出す音。
だから、子音と母音とを同時に発音する日本語は、母音を発しやすくするために子音の発音を少々遠慮する必要があるのだ。

例えば、「サ」はアルファベットで表示すれば「sa」だが、英語では子音「s」と母音「a」を別々の音として発音するので子音も母音もしっかり発音する。
しかし、日本語としての「サ」は「sa」を1つの音として子音と母音とを同時に発音する。
だから、母音である「a」を発し易いように、子音である「s」の発音は舌の動きを最小限に留める必要があるのだ。

これらのことから、日本人にとって「子音だけの発音」は困難を極める。
日本人が子音「s」をしっかり発音しようとしたら「su」と母音がついてしまうか、上手く子音「s」だけを発音できてもその音は弱い。
さらに日本人は子音だけを聞くことがないので、少し弱くなる英語の語尾の子音が聞こえない。
そのために「語尾の子音は発音しなくてよいもの」と勘違いする日本人がいる。そう教えている日本人の英語教授すらいる。
英語に慣れてくれば日本人の耳にも語尾の子音がちゃんと聞き取れるようになるのにだ。
英語に慣れていない日本人の耳には聞こえていないだけで、当然、英語ネイティブは語尾の子音もちゃんと発音しているわけだから、日本人が英語の語尾の子音をはっしょって発音すると、単語によっては英語ネイティブには通じないか違う単語に聞こえてしまう。

冒頭で述べたように、日本語が母国語ならばその訛りは消えないし、英語での会話が成り立つのであれば発音を気にしすぎる必要もない。
だが、英語の適切な発音方法は知らないよりも知っていた方がいい。英語で会話をする機会が増えれば増えるほど、適切な発音の知識が役立つ状況に遭遇することが増える。
文法の細かいことが原因で会話が全く通じないということはほぼないが、発音が違うために単語が全く通じないということは少なからず発生する。
そんなときに、適切な発音の知識がなければ同じ発音で繰り返し言ってみるだけで結局通じないで終わってしまう。
しかし、適切な発音方法を知っていて、それを意識して改めて言い直せば必ず100%通じる。

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