関係代名詞の多用は不自然でダサく読みづらい

2020年4月

英語の学習は「文法=計算式」のような感覚で覚えていると必ず理解につまずくときがくる。
理解したつもりでも生きたものにはなりづらい。
文法や用法ばかりに気がとられて、肝心な内容がおろそかになるからだ。

その代表的なものが関係代名詞の使い方だ。関係代名詞を使うのは「特定すべき情報」や「ついでの情報」を伝えるのが目的なのだが、それを理解していなければ、関係代名詞を使わなくていいシンプルな表現まで関係代名詞を使ってヘンテコな表現をしてしまいがちである。
主に、英語を使う実践が少なく文法に頼り過ぎているために、日本語をそのまま英訳しようとする人に見られる傾向である。

以下、制限用法に「that」、非制限用法に「, which」を使う。両者の違いは別ページの
第5話 関係代名詞の制限用法と非制限用法 / that と which を参照のこと。
省略可能な関係代名詞は括弧つき「(that)」で表現する。

例1)「栄養が豊富な卵は健康に良い」

制限用法の関係代名詞を用いてしまった例

× Eggs that are nutritious are good for health.
(卵にも色々あるけど)栄養が豊富な卵は健康にいい。

一般的に考えて「栄養が豊富でない卵」などないので「栄養が豊富な卵」と特定するのは妙。
(eggs that are nutritious で検索するといくつか表現が出て来るがこれはすべて egg の前に付随している a breakfast with などを含めた名詞句が先行詞)
しかし、この内容で以下のように非制限用法にしても妙な内容だ。

非制限用法の関係代名詞を用いてしまった例

× Eggs, which are nutritious, are good for health.
 卵というものは栄養豊富だが健康に良い。

卵というものが栄養豊富ならば、それが健康に良いのは当たり前である。
わざわざ、関係代名詞を用いるような内容でもない。

この内容で関係代名詞を使う必要はない

関係代名詞を使う上で厄介なのは、和訳してみるとそれで日本語としての意味が通じることだ。 上記の例でも和訳からわかるように、日本語では何の違和感もない。だから、日本語にはない用法を和訳から理解しようとしてはいけない

「栄養が豊富な卵は健康によい」の英訳に関係代名詞を使う必要はない。以下の表現で十分。

Eggs are nutritious and good for health.

関係代名詞を使う例

I have eaten an egg that was 2 weeks out of date, but I was fine.
賞味期限が2週間切れてる卵を食べたことあるけど、平気だったよ。

I became much stronger since I started eating ABC Farm eggs, which floor-reared hens lay.
平飼いのニワトリが産むABCファームの卵を食べるようになってから随分(体が)強くなった。

例2)「母の友人である女性を見かけた」なんて言いますか?

× I saw a woman who is my mother's friend in the store.
 店で母の友人である女性を見かけた。

関係代名詞 who の使い方としてこんな変な例を挙げているのを見かけたことがある。
確かに文法としては間違いないが不自然である。日本語でも不自然である。以下で十分。

I saw my mother's friend in the store.
 お店で母の友人を見た。

通常はこの後に話や文が続くだろうから He/She などから男性か女性かはわかる。どうしても男性か女性かを区別したいならば male / guy / female などを friend の前に付ければいい。


× The dog (that) my brother had has been missing since last week.
 兄が飼っていた犬が先週からいない。

まわりくどい。日本語にしてみると不自然ではないのがまた厄介である。以下で十分。

My brother's dog has been missing since last week.
 兄の犬が先週からいない。

関係代名詞を使う例

I saw a man who looks like Johnny Depp.
ジョニーデップに似た男性を見かけた。

The dog (that) my brother rescued found a home.
兄が助けた犬は貰い手が見つかった。

関係詞の多用は不自然で読みづらい

以下は身近で目にした英訳である。なんだか晒す形で気が引けるが掲題の良い例なので使用させてもらう。
通じるか通じないかと言えば問題なく通じるし、正しいか間違いかと言えば間違いではない。しかし、実際の英語に触れる経験の乏しい人の英訳であることは一目でわかる。典型的な「日本語をそのまま英訳した」文章で、文法には忠実だが不自然な表現だからだ。そのひとつに関係詞の多用がある。
更に辛口なことを言わせてもらえば、長文の場合は英訳であろうと和訳であろうとその言語に応じて読みやすいように一旦区切るが、区切った箇所も不自然なことから、果たして本当に意味を考えて英訳されたのかも怪しいところだし、1つのセンテンス内で不必要に同じ単語を複数使っている点もセンスを感じられない。
これが英語学習者の英訳であれば納得いくし、皆そういう段階を経て上達していくのだからそれでも良いと思うのだが、驚いたことにこの英訳者は高校の英語教師らしい。

△ In this year which marks the 400th year since the passing of William Adams, the second edition of this book on the man, who here I need not explain any further here, has been published. I would like to tell you of some of my personal experiences from events in which I have been involved pursuing his past.

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【日本語原文】
ウィリアム・アダムスがいかなる人物であったかということを今改めてここに書き記す必要はないと思いますが、アダムス没後400年に当たる本年、本書の第二版発行に当たり、私が個人的にアダムスの追善のための行事にたずさわった経験を思い起こし、ここに述べさせて頂きます。

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私なら以下のように英訳する。関係詞は使わずに済む。(使っている who は間接疑問詞)
This year marks the 400th anniversary of the death of William Adams and the second edition of this book about him has been published. Although it is needless to explain who he is, I would like to express my remembrance from my personal experiences involved with his memorial events.

※ passing は sympathy card などお悔やみメッセージで多用される婉曲な表現だが、「没後〜周年」などの表現の場合は death が多用される。基本的にどちらでもよい。

※ book on ○○ は 専門的・学問的な内容の本を暗示するので、この場合は book on him より book about him の方が妥当。
例)
a book about animals 動物に関する本
a book on animals 動物に関する(専門的な内容の)本

関係代名詞も当然のことながら意味を考えて使うべき

インターネットでよく見かける日本語による関係代名詞の解説は、ほとんどが文法ルールに固執したものばかりで、肝心なその意味について述べられているものはわずかだ。
今どきのインターネットの発信側は、アクセスを集める目的のものが圧倒的に多くSEO重視で作成しているから、英語関連に限らずタイトルばかりが人の気を引くもので内容が伴っていないものも多い。その傾向はここ数年の間にさらに酷くなっている。

だから「その内容だったら普通は関係代名詞使わないよ」という例文もよく見かける。 更には、独自の自己分析を定義のように述べ、実際とは正反対の意味を意気揚々と解説しているものまであった。 さすがにこのサイトにはそれとなく「違うよ」という内容のコメントを送ったが、返ってきた回答は「理解するために自分のより良いように解釈すればいいのだ」ということだった。確かにその通りなのだが、定義の解釈が全く正反対ではその回答は意味をなさない。

そうかと思えば「ネイティブは関係代名詞なんか使わない」なんていう教示も見かけるが、これまた極端である。何事も両極端ではいけない。
関係代名詞はあらゆるところで日常的に使う。新聞や本やフォーマルな文書ではもちろんのこと、カジュアルな会話やメールなどで頻繁に聞くし使われている。逆に使わなければ明確に伝わらないことも多々ある。

しかし文法ルールだけでしか覚えていないと、シンプルかつ自然な表現さえも、複雑で不自然な表現にしてしまうことは簡単に起きてしまう。まあ、その過程を経てみな英語が上達していくのではあるが。
関係代名詞はその意味や使い方がわかってしまえばどうってことないのだが、そうなるには何度も述べてきたが、より多く実際の英語に触れることは必要不可欠だ。

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