関係代名詞の制限用法と非制限用法 / that と which

2017年11月

英語を勉強していく過程で、関係詞の制限用法と非制限用法の違いに頭を悩ますときがくる。
辞書を調べてもわかったようなわからないような。インターネットで検索してみても辞書と同じような内容ばかり。
「固有名詞には非制限用法のみ」だとか言われても、和訳してみると制限用法でもよさそう。
どうして2つの用法に分けられているのか不可解だ…と悩む。
それもそのはず、和訳からはその違いは掴めない。日本語にはない用法なのだから、日本語と同じように考えて理解しようとするのは土台無理な話なのだ。
やはりここでも和訳ではなく意味をつかむことが確実な理解への道となる。

関係代名詞 that と which の使い分け

物事の関係代名詞、that と which の使い分けを巷では色々と噂されて複雑にされがちだが、
使い分けというより、使われる地域によって違う傾向があるというだけのことである。

・アメリカ英語では制限用法に「that」 非制限用法に「( , ) which」を使う。
・イギリス英語やヨーロッパでは制限用法に「which」 非制限用法に「, which」が使われる。 ・アメリカ英語であれイギリス英語であれ以下の場合は「that」を使うのが基本ルール。
1) all, some, few, every, any, many, much など不定形容詞/不定代名詞を伴う先行詞
2) the best, the biggest, the most, the worst など最上級を伴う先行詞
3) the first, the second などの序数を伴う先行詞

関係代名詞の省略

制限用法の目的格(関係代名詞直後の文章が主語から始まる)では、関係代名詞は省略可能で口語の場合はほとんど省略される。 非制限用法では省略できない。
以降、省略可能な関係代名詞は括弧つき(that)で表現する。

制限用法 「○○ + that + 説明文」

○○にも色々あるけど、その中でも説明内容に限定した○○だよ

This morning I ate a tomato (that) my grandma grew.
今朝、私のおばあちゃんが育てたトマトを食べた。
(今朝トマトを食べたのだけど、単なるトマトじゃなくて、私のおばあちゃんが育てたものよ

a tomato は「1つのトマト」。これだけだと、1つのトマトであればどんなトマトをも指す。
これに that という粘着テープを用いて my grandma grew 「私のおばあちゃんが育てた」という説明をくっつけると、
a tomato (that) my grandma grew 「私のおばあちゃんが育てたトマト」と特定できる。
他のどのトマトでもなく「私のおばあちゃんが育てたトマト」限定についての話なのだ。

逆に考えると、そうやって特定できるということは、世の中には「私のおばあちゃんが育てていないトマト」も一般的に存在することを暗示する。

some tomatoes (that) I bought at Vege Shop 「私がベジショップで買ったトマト」
(世の中には私がベジショップで買っていないトマトも存在する)

a tomato that went bad 「悪くなったトマト」
(世の中には悪くなっていないトマトも存在する)

これらは、「トマト」という物である点には変わりないが、どのようなトマトなのかという点では同じではない。 その同じではない部分を伝えるのが関係代名詞の制限用法である。

非制限用法 「○○ + , which + 補足文」

○○ってさ、ついでに言えば -----(補足文)なんだよ

The salad included chopped onions, which I don't like.
そのサラダにはみじん切りのタマネギが入っていた。私が嫌いなものだ。
(そのサラダにはみじん切りのタマネギが入っていたけどさ、ついでに言えば、私はタマネギが嫌いなんだよね。

タマネギというものをひとくくりに考え、「, which」という指し棒で「私はそれが嫌い」という補足情報を指しているだけ。
つまり、 先行詞○○についての「ついでの情報」を伝えるのが非制限用法。
先行詞は、すでに特定されている物事やひとくくりとして考える物事となる。
固有名詞や世の中に1つしかないものは特定しようがないため制限用法にはなり得ず、
必然的にこの非制限用法になる。

制限用法と非制限用法の違いは和訳で理解するのは不可能

冒頭で述べたとおり、制限用法と非制限用法の違いは和訳で考えると混乱する。

onions, which I don’t like ・・・[非制限用法](タマネギって私が嫌いなもの)
onions (that) I don’t like ・・・[制限用法]
(タマネギの中でも私が嫌いなタマネギ限定。世の中には私が好きなタマネギも存在する)

これらを読みやすい和訳にするなら両方とも「私が嫌いなタマネギ」となり得て、日本語として何の違和感もないからだ。
しかし、通常は「onions (that) I don't like(タマネギの中でも私が嫌いなタマネギ限定。私が好きなタマネギも存在する。)」は考えられないので、この内容で制限用法にはなり得ない。

制限用法と非制限用法の違いを学ぶときに、先行詞ばかりに注目されがちだが、実践ではその物事をどのように捉えてどのように伝えたいのかで制限用法か非制限用法かになる。
世の中に一つしか存在しないものは非制限用法にしかなり得ないのは事実だが、先行詞が不特定多数の物だからとか不定形容詞を伴うからって制限用法ばかりというわけでもない。

けっこう英語ネイティブも適当に使っている制限用法と非制限用法

文法ルールというものはあくまでも言葉を使う上で目安にするためのルールである。
「言葉ありきの文法ルール」ということを忘れてはならない。
関係代名詞に関して言えば、実際には、きっちりしたフォーマルな文書でもない限り that を使うべきとされるところで which が使われていることもあるし、which が適切だろうけど that が使われていることもあるし、非制限用法でもカンマがないなんてことはザラだ。
しかし、関係代名詞の制限用法と非制限用法の違いの根本を理解していれば、ほとんどの場合において、会話や文章の内容からどちらの意味なのかはすぐにわかる。
逆に言えば、根本をちゃんと理解していれば、その関係代名詞が制限用法なのか非制限用法なのかにこだわる必要はない。文脈や内容からどちらの意味なのかはわかるのだから。

関係代名詞の制限用法と非制限用法の違いは、わかってしまえばどうってことはない。
「制限用法」とか「非制限用法」とかいう小難しい言葉の意味すらも納得できる。
だが言うまでもなく、違いを明確に理解するには、より多く英文を読んだり英語を話したりする機会を増やすことは必要不可欠だ。
なにしろ日本語にない用法なのだから生きた英語に触れることなしで得られるものではない。

関係代名詞「that」「, which」の例文いろいろ

I love movies that make me cry.
私は泣ける映画が大好きだ。
(私は映画が大好きだけど、映画なら何でもっていうわけじゃなくて、私を泣かせるものだ。)

My mother bought a computer (that) I recommended.
私が薦めたパソコンを母が買った。
(母がパソコンを買ったのだが、単なるパソコンじゃなくて、私が薦めたものだ。)

This is the best spaghetti (that) I've ever had.
これは私が今まで食べた中で一番おいしいスパゲティだ。
(これは一番のスパゲティだけど、何の中で一番かというと、私が今まで食べた中でよ。)
※通常は「こんなおいしいスパゲティ食べたことない。」と和訳される。

Champon was the first meal in Japan (that) my wife cooked for me.
ちゃんぽんは、妻が私に作ってくれた日本での初めての食事だった。
(ちゃんぽんは日本で初めての食事だが、どんな初めてかというと、妻が作ってくれた中でだ)

This is the biggest cockroach (that) I've ever seen!
これは私が今まで見た中で一番大きいゴキブリだ!
(これは一番大きなゴキブリだが、何の中で一番大きいかといえば、私が今まで見た中でだ。)
※通常は「こんな大きなゴキブリ見たことない!」と和訳される。

Some items (that) I wanted to order were sold out.
= Some of the items (that) I wanted to order were sold out.
注文したかったいくつかの商品は売り切れだった。
(いくつかの商品が売り切れだったけど、単なる商品じゃなく、私が注文したかったものよ。)

The housing website shows many unique rooms that attract me.
その住宅ホームページは私を魅了する独創的な部屋を多くを掲載している。
(その住宅ホームページは独創的な部屋を多く掲載しているが、単なる独創的な部屋じゃなくて、私を魅了するものだ。)

Yesterday we enjoyed a dinner at Yum Sam restaurant, which just opened last week.
昨日、私たちはヤムサムレストランでディナーを楽しんだ。そこは先週オープンしたばかりだ。
(昨日ヤムサムレストランでディナーを楽しんだ。ついでに言うなら、そこは先週オープンしたばかりなんだ。)

Huis Ten Bosch, which is famous for scenery of the Netherlands, amuses visitors with beautiful tulips in the spring.
オランダの風景で有名なハウステンボスは、春には美しいチューリップで来園者を楽しませる。
(ハウステンボスは、ついでに言えば、オランダの風景で有名なのだが、春には美しいチューリップで訪れる人々を楽しませる。)

She gave away all her clothes (that) she no longer wears.
彼女はもう着ない服をすべて人にあげた。
(彼女は服を全部人にあげたが、服を全部といっても、彼女がもう着ないものだけだよ。)

In my childhood, my mother made all my clothes, which were so cool and would make me proud of her.
子どものころ、母は私の服をすべて作ってくれた。それらはとてもかっこよくて、私は母を自慢に思ったものだ。
(子どものころ、母は私の服を全部作ってくれた。ついでに言うなら、それらはとてもかっこよくて、母を自慢に思ったものよ。)

I see so much white bread in Japan, which I never eat.
日本では私が食べない白いパンをたくさん見かける。
(日本では白いパンを多く見かけるが、ついでに言うなら、私は白パン食べないんだよね。)

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